DIALOGUE+は本質ユニット。
1.導入
全曲通しでKey=Gmajですね。このくらいエネルギッシュでハイカロリーな曲がGmajだと燃えませんか?
2.Intro
れぼるじゃーんはG,B,D,Gの積み重ねです。初めて聞いた時はここでもう"""好き"""を確信していました。
I→ = → = → = →IIm7 | I/3→IVM7 | ♭VII7-5(9)omit3→I
1,2,3,4..と来たら普通は5じゃないですか?いきなりブラックアダーコードをブチ込まれて横転しました。
答えから言うと♭VII7-5(9)omit3(長いな)はサブドミナントマイナーの代理なんですが、サブドミナントマイナーについて整理していなかったと思うのでちゃんと触れておこうと思います。
サブドミナントの3度の音が半音下がっている、つまりスケールにおける♭6の音を含むコードがサブドミナントマイナーおよびその代理として使用できることになります。
IIm (2,4,6)→IIdim (2,4,♭6)
IIm7 (2,4,6,1)→IIm7-5 (2,4,♭6,1)
IV (4,6,1)→IVm (4,♭6,1)
IVM7 (4,6,1,3)→IVmM7 (4,♭6,1,3)
VIIm7-5 (7,2,4,6)→VIIdim7 (7,2,4,♭6) (このコードはドミナント要素の方が強いですが)
さて困りました。♭5だのテンション9thだのを入れる前に♭VII7なんてどこにも出てきませんね。
原点に立ち返って、IVM7の後にIVmであるCmを使うとして、丁度そのコードの鳴るタイミングのメロディラインであるAの音を加えてCm6としたIVm6 (C,E♭,G,A)を考えてみましょう。そうするとIIm7-5であるAm7-5 (A,C,E♭,G)の構成音に一致しました。あとはこのIIm7-5の短3度下にベースを追加してやるとあら不思議、♭VII7(9) (F,A,C,E♭,G)になりました。さああとは5度を半音下げ、3度を抜いてハイブリッドコードの形にすれば、♭VII7-5(9)omit3の完成です。
サブドミナントマイナーこねくり回すのは分かったけど短3度下にベースを追加するなんて聞いてないよ!というのも分からなくはないですが、4から♭7というのはベースが強進行していて、また、IVm→♭VII7といったバックドアドミナントの動きに一致することになるのでそこまで脈絡のない話ではないのです。ここだけ取り出してみると割と採用例はあり、内田真礼さんの2nd Album「Magic Hour」に収録されている「My Star is Here!!」(作詞作曲:ZAQ, 編曲:y0c1e) のBメロであったり、ブラックアダーコードの形こそしていませんが、Wake Up, Girls!さんの「7 Girls War」(作詞:辛矢凡, 作曲:神前暁・田中秀和, 編曲:田中秀和) の3:59~で使われています。
Bメロ冒頭、CM7→F7-5(9)omit3→Bm7→Em7 (IVM7→♭VII7-5(9)omit3→IIIm7→VIm7, Key=Gmaj)
3:59~、G→C7→F#m7→Bm7 (IVM7→♭VII7→IIIm7→VIm7, Key=Dmaj)
ということで、♭VII7もサブドミナントマイナーの代理として使えるよ、という話でした。
もうちょっと脱線して、♭VII7-5(9)omit3におけるコードスケールも考えてみましょう。
F(1),G(9),A(3),B(#11),C(5),D(13),E♭(♭7)ということなので、Fリディアンドミナント、Gから見たモードで考えると、G(1),A(9),B(3),C(11),D(5),E♭(♭13),F(♭7)なので、Gメロディックメジャー(Gミクソリディアン♭13)となります。
あれ、まだ6小節くらいしか終わっていませんね。
Hello, nice to meet you, yeah!のところもまたびっくり要素ですね。ゆっくり見ていきましょう。
#IVm7-5 | VII7(♭13)→♭VII7-5(9)omit3 | VI7
さあ今回の♭VII7-5(9)omit3はサブドミナントマイナーの代理ではありません。直後にVIIがあるので、前後のマイナー→メジャーの動きを考慮すると、もともとはIIIm7のBm7で、これをドミナントセブンスの形にしたB7を弄り回して作ったブラックアダーコードと捉えるのが自然でしょう(ベースは1拍ずつトライトーンで遊んでいますが)。となると、その前のF#7(♭13)はBメロディックマイナーやBハーモニックマイナーのスケールで使えるドミナントということになりますし、F#7(♭13)の前のC#m7-5はF#ハーモニックマイナーの5度のコード、というようにつながっているわけです。どんどんモードがチェンジしていてめまぐるっぱですね(?)。
IIm7→IIm7/5 | V7(♭9)→IIIm7→VI7(♭9)
1-6-2-5の循環進行の前後を入れ替え、1を3で代理した2-5-3-6の逆循環進行ですね。なんと#IVm7-5からV7までブラックアダーコードをIII7とみなせば強進行の連続です。
IIm7 | IIIm7→IVM7 | ♭VII VI ♭VI→V→ = | ♭II7-5(9)omit3
IVM7まで順次進行、Vに行きたいんですが、その前に♭VIIから半音ずつ3連符で下降してアプローチ。ダメ押しで追いブラックアダーコードの♭II7-5(9)omit3。これは最早定番ですね。
3.1A
I→IV | V→I→IV | V→#IVm7-5 | IVM7→IIIm7 | ♭IIIdim7→IIm7 | ♭II7→I
嵐のようなイントロとは打って変わって最初の4小節はスリーコードのみ。2回目のドミナントの後はIに行っていません。アニソンでよく出てくる例を見てみましょう。
③IIImへ
2-5-3-6の逆循環進行、イントロで出てきましたね。もしくは王道進行4-5-3-6なんかも定番中の定番です。はじめてのかくめい!の作曲者である田淵智也先生も迷ったら4536って言っていました。
0:30~ EM7→F→Dm7→Gm7 (IVM7→V→IIIm7→VIm7,Key=B♭maj) アイマイモコ - 水瀬いのり
④IVへ
解決の保留です。
0:44~ A7→GmM7 (V7→IVmM7, Key=Dmaj) Wonder Caravan! - 水瀬いのり
⑥VImへ
いわゆる偽終止というやつです。
1:04~ CM7→D→Em7 (IVM7→V→VIm7, Key=Gmaj) 夢のつぼみ - 水瀬いのり
さて、いのり縛りをしてしまったわけですが、Vの後に#IVm7-5のくる例なんてないじゃないか!って思いそうになったそこのあなた。#IVm7-5の構成音をよく見てみると、#4,6,1,3ということで、4,6,1,3のIVM7のベースを半音上げた変位和音という見方ができます。また、#IVm7-5の第1転回形は6,1,3,#4ということでVIm6と構成音が同じです。つまり#IVm7-5も、解決の保留や偽終止として用いることができるわけですね。
長くなりましたが、#IVm7-5からIへは、ベースが半音ずつ下降する動きになっています。♭IIIdim7はIIIm7とIIm7を繋ぐディセンディングディミニッシュです。♭II7は前後を見るとIIm7→V7→Iと行きたいところでV7の代わりに裏コードを使用している、ということになります。
2巡目に行きましょう。
I→IV | V→VIm7→Vm7 | Iaug→#IVm7-5 | IVM7→IIIm7 | ♭IIIdim7→IIm7 | ♭II7→I
Vの後のVIm7はまさしく偽終止、Vm7が出てきた時点であ、これはIVM7を目指すセカンダリドミナントのツーファイブだなと我々は思うわけですが、ここは編曲:田中秀和 (MONACA)。IVM7を変位和音の#IVm7-5にするだけでは飽き足らず、I7はIaugになっています。仮のツーファイブ、そしてその進行先が変位和音というのは、水瀬いのりさんの「ココロソマリ」(作詞:水瀬いのり, 作曲:櫻澤ヒカル, 編曲:白戸佑輔) の2Bに例があります。
2:17~ Dm7→G7→C#m7-5 (Vm7→I7→#IVm7-5, Key=Gmaj) ココロソマリ - 水瀬いのり
4.1B
IVM7→♭VII7-5(9)omit3→IIIm7→IIIm7/6 | VIm7→IIm | IIIm→IV | V→♭VI→♭VII
この♭VII7-5(9)omit3はサブドミナントマイナーの代理ですね。ちょうど上記で挙げた内田真礼さんの「My Star is Here!!」のBメロと全く同じ進行です。その後は順次進行、そして同主短調からのモーダルインターチェンジ♭VI→♭VIIを通ってサビへ向かいます。
5.1C
I→V/7→#Vdim7→VIm7→IVm6→I/3→IIm7→♭VIIM7 | V/7
#Vdim7はアセンディングディミニッシュでV7/VIの役割もありますね。VImからIVm6に飛ぶのもエモいです。♭VIIM7はどこから出てきた、という感じですが、IIm7の短3度下にベースを追加すると♭VIIM7になるので、これはプリドミナントの役割がある、ということになります。ドミナントの前に♭VIIM7を置く曲としては、アイドルマスターシンデレラガールズのアニメのOPテーマ「Star!!」(作詞:森由里子, 作編曲:田中秀和)が挙げられます。
1:11~ F#m7→DM7→B7 (IIm7→♭VIIM7→V7, Key=Emaj) Star!! - CINDERELLA PROJECT
2巡目に行きましょう。
I→V/7→Vm7/♭7→VI7→IIm7 | IVm6→IIIm7 | VIm7→IIm7 | IIm7/5→I | #Idim7→
#IVm7-5 | IVM7→IIIm7 | ♭IIIdim7→IIm7 | V7→I
1巡目とコード進行が変わります。IからVI7まで半音で下降していくのはよくある形ですね。この場合だとVm7はIIm7に対するサブドミナントマイナー、VI7はV7/IIということになりますね。この進行はTrySailさんの「adrenaline!!!」(作詞,作曲,編曲:中野領太) などに例があります。
1:12~ G→D/F#→Dm7→E7 (I→V/7→Vm7/♭7→VI7, Key=Gmaj) adrenaline!!! - TrySail
V7/IIのVI7の後は逆循環進行の2536...ではなく5の部分がサブドミナントマイナーに置き換わっている形です。
ツーファイブワンの後に#Idim7が、そしてその後に#IVm7-5の半音下降が続いています。#Idim7というコードに着目するのであればアセンディングディミニッシュでIIm7かな~という感じですが、実際の進行先が異なるのでアセンディングディミニッシュではありません。そこで、dim7の転回形は元のコードの構成音をルートに持つdim7と、異名同音で一致する性質を活かして、#Idim7をIIIdim7に変えてしまいましょう。すると、これはI7(♭9)のルート省略形と考えることができるので、安心してIVM7...ではなくそのベースを半音上げた#IVm7-5に進行できます。
6.Inter1
れぼるじゃーん~スタートまではイントロと同じ進行、その後に
#IVm7-5 | IVmM7→I/3→Im/♭3→V→ = | ♭II7-5(9)omit3
でAメロへ入ります。
7.2A
1巡目、I→IV | V→I→IV | V→#IVm7-5 | VIIaug→Iaug7 | VI7→IIm7 | ♭II7→Iです。
イントロと比較してみましょう。
イントロ:#IVm7-5 | VII7(♭13)→♭VII7-5(9)omit3 | VI7→IIm7
2番Aメロ:#IVm7-5 | VIIaug → Iaug7 | VI7→IIm7
VII7(♭13)の構成音はF#,A#,C#,E,D、VIIaugの構成音はF#,A#,Cx(D)とかなり近いですし、♭VII7-5(9)omit3はF,C♭(B),E♭,G、Iaug7はG,B,D#,Fと構成音が完全に同じですね。
VIIaugといいつつ、5thの音はドミナントモーションに影響を及ぼすわけでもないので役割はVIIと同じと考えていいですし、Iaug7は♭VII7-5(9)omit3のパーミテーション違いに当たるので、進行の骨組みとしてはイントロと同じ、と捉えられます。
後半部分は1番と同じです。
8.2B
IVM7→♭VII7-5(9)omit3→IIIm7→IIIm7/6 | VIm7→IIm | IIIm→IV | V→♭VI→♭VII | ♭VII VI ♭VI→V
おおむね1番と同じですが、末尾に2小節追加されてサビの入り方を1番とは変えています。ここは田淵智也 (UNISON SQUARE GARDEN) 要素ですね。
君の瞳に恋してない (作詞・作曲:田淵智也, 編曲:UNISON SQUARE GARDEN)
9.2C
殆ど1番と同じですが、終わりの部分が
#IVm7-5 | IVM7→IIIm7 | ♭IIIdim7→IIm7 | V7→IVm/1→I
となっていて、サブドミナントマイナーの第2転回形を挟んで解決するタイプです。Wake Up, Girls!さんの「Polaris」(作詞:Wake Up, Girls!, 作編曲:田中秀和) のサビ終わりがこのパターンです。
0:12~ A♭m7→D♭7(♭9)→C♭m/G♭→G♭ (IIm7→V7(♭9)→IVm/1→I, Key=G♭maj)
10.Inter2
堀崎翔さんのロケンロなギターソロです。
#IVm7-5→IVmM7→IIIm7→♭IIIdim7→IIm7→V7→IM7→VI7(♭13)→
#IVm7-5→VII7(♭13)→♭VII7-5(9)omit3→VI7(♭13)→IIm7→IIIm7→IV→IIm7/5 | Iaug
前半は#IVm7-5からの半音下降でツーファイブ、後半はイントロと同じ形をもってきて順次進行、最後Iaugはこの後にIVM7があることを考えるとI7を弄ったのかなあという感じがします。AメロのVm7 | Iaug→#IVm7-5の流れと骨格は同じです。
11.3B
IVM7→IVmM7→IIIm7→IIIm7/6 | VIm7→IIm | IIIm→IV | V→♭VI→♭VII | ♭VII VI ♭VI→V
サブドミナント→サブドミナントマイナー→3-6の流れ、装飾されていないものがやっとここで登場です。後半部分は2Bと同一です。
12.DropC
I→V/7→V | #Vdim7→VIm7→I7(V7/IV)→IVM7→I/3→IIm7→IV/1→♭VIIM7→V
です、おおむね通常のサビの前半部分を踏襲しています。
13.3C
2巡目の進行が変えられています。
VIm7→V/7→I→VI7/#1
どうでしょうか、前回の曲ではブラックアダーコードはドミナントセブンスの裏コードから派生したコードとして紹介しましたが、今回は
・サブドミナントマイナーからの派生
・ドミナントセブンスをaugにしたものの転回形
という2つの新しい用法が出てきました。形や響きが面白いので分数augや田中aug、挙句の果てにはイキ○ギコードなんて呼ばれたりしますが、用いられるプロセスというのは1通りではありません。ブラックアダーコードが出てきたときには元の形を意識する、ということが楽曲分析をする上ではとても大切です。
み゛ん゛な゛か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛
今日はDIALOGUE+JAM vol.2の日でした。一刻も早くこの状況が収まることを願って締めたいと思います。