雨音工房

主に声優・アニメ楽曲のコード進行を解説していきます。たまにガジェットの話題をやるかもしれません

【コード進行解説】東山奈央 群青インフィニティ

お久しぶりです。明けましておめでとうございます。

SNS上で楽曲派諸氏がやっていた声優アーティスト楽曲大賞2019にノミネートされていたのが多く散見された強い曲です。編曲こそ外注していますが、作詞・作曲を自ら手掛ける東山奈央さんは今後絶対に伸びる方です。お前何様なんやって感じなのでこの辺にして解説に入ります。

 

1.導入

全体通してKey=Amajです。このブログでAmajの曲を解説するのはもしかして初めてですか?

 

2.イントロ

前奏の前にIVM7→V→VIとメジャーコードの力強い平行移動が6小節挿入されています。VIから次のIVM7への飛び方ですが、VI7の解決先IIm7(9)(B,D,F#,A,C#)を想定して、ここからルートを省略してやるとIVM7になりますね。

ギターソロが始まるとIVM7→III7→VIm→II7→IVM7→III7→IIm7と進みます。III7はIImのセカンダリドミナントVIm→II7は強進行ですね。コードの動き自体は平行調のF#minではなく確実にAmajでありそうながらここまでAmajトライアドの出てこない不思議な感じのする曲です。

 

3.Aメロ

イントロ末尾のVImをそのまま2小節引きずります。8小節目はNo Chordということにしてありますが、つけるとすればVですかね、VImVIm→IVM7→V→VIm→IVM7→I(→V)となります。これを2回繰り返してBメロへ入ります。

 

 4.Bメロ

IVM7→IVM7→VIm7→VIm7→IVM7→#IVm7-5→Vsus4→Vsus4→Vです。最初の4小節は似たような響きのコードを並べて大人し目に抑え、後半でセカンダリドミナントを挟んで初めてIに解決できそうなVにたどり着きます。長い道のりでしたね(?)

 

5.サビ

最初の8小節はI→I→III7→III7→VIm7→VIm7→Vm7→I7ですね、突然ノンダイアニックコードのIII7が登場しますが、I→III→VIm~の形はミリオン(?)のソロ曲の「夢色トレイン」のサビにも使われているもので、カノン進行の前半部分を置き換えるような形で用いることができます。最後のVm7→I7はお馴染みIVM7から見たツーファイブです。

後半8小節はIVM7→V7→IIIm7→VIm7→IVM7→#IVm7-5→Vsus4→Vと、王道進行を挟んでVまで帰ってきます。

2巡目は王道進行までは1巡目と同一、最後にIVM7→V7でスリーコードで解決するか?と思わせてからのそのままイントロに突入という(メロディーはきちんと解決しますが)なんとも浮遊感のあるサウンドに仕上がっています。

 

6.間奏

サビ末尾のVを受け代理トニックのVImを4小節置いてスタートして、IVM7→III7→VIm→II7→IVM7→III7→VIsus4→VIと進みます。VI度のコードがイントロではマイナーだったものがここではメジャーとして使われることで、この後にまだ続くことを示唆するような響きになっています。ギターソロ後半ではIVM7→III7→VIm→II7までが共通でその後ろはIIm7→IIIm7→IVM7→Vと順次進行となっています。

唄が入るとIVM7→IVM7→V→V→VIm7→VIm7→VIm7→VIm7で8小節食い、ここから♭III→♭III→IIm7→Vm7とAドリアンスケールからコードを借りてきたような響きになります。その次はVIm7→VIIm7でリディアンを漂わせ、IIIsus4→IIIと間奏をノンダイアニックコードで終わらせるとかいう本当にビックリ案件です。なんですかねこの曲は()

 

落ちサビ以降は既出のサビと同じなので省略します。

冒頭にも書きましたが、この曲は東山奈央さんがご自身で作詞・作曲を手掛けていらっしゃいます。一般に作曲というとサビのメロディーを考えるだけ、と思うかもしれませんが、昨今の曲でメロディーだけ考えるというのは現実的に可能性が低いのかなあと感じます。1つのメロディーには色んなコードを当てることができますが、「メロディーからコードが分かる」ということがなによりコードを同時に考えていることになるわけで、そうなってくると作曲の力のみならず、彼女は編曲能力も持ち合わせていることになります。音色やエフェクトにこだわりのあるアーティストさんは多くいらっしゃる印象を受けますが、音そのものに自ら手を加えてリリースする方というのは希少ではないでしょうか。声優アーティスト楽曲大賞2019に多くノミネートされたのはその高いプロデュース能力が評価された妥当な結果と云えるでしょう。昨年のツアーは日本のみならず上海でも開催されていましたが、今後もその力を存分に発揮していただきたいと思います。FCイベではツアーが発表されませんでしたので秋以降に期待しています。夏にやられるとキン○レコードにすでに財布を握られていて行けないので。

それでは。