雨音工房

主に声優・アニメ楽曲のコード進行を解説していきます。たまにガジェットの話題をやるかもしれません

【コード進行解説】バンドじゃないもん! ゴッドソング

本当は「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」って名前らしいですね。タイトルがそれで埋まってしまいそうなので旧ユニット名で書かせていただきました。

バンもんさん自体は10月10日に開催されるイベント「DIALOGUE+ JAM vol.2」でカバー予定の「METAMORISER」という曲を予習して認知していたんですが、いつもYouTubeで「秀和」と検索しているとこんな動画がありまして

 

秀和は...神だよ...とか変なことを思いながら動画の存在を知りつつ踏ん切りがつかないとなかなか曲を聞くことができないタイプなのでようやく拝聴しました。

 

ヤバいですね☆

 

ということで今回は「ゴッドソング」のコード進行を解説して優勝していくことにするわね...

TIFオンラインにも出るそうなのでとても期待しています。 

 

ゴッドソング - バンドじゃないもん! MAXX NAKAYOSHI 

作詞:みさこ 作編曲:田中秀和 (MONACA)

 

1.導入

Key=Gmajです。転調はありません。イントロ~Aメロ、間奏などはベースが♭6や♭3にいたりするのでGminのように感じるかもしれませんが(事実ChordTrackerに解析させたらGmとか平気で書いてきましたし)、フレーズ頭ではちゃんとGメジャートライアドが鳴っています。

 

2.イントロ~Aメロ・間奏

I | Isus4/♭3 | Isus4/2 | Isus4/♭2→I | Isus4/♭3→Isus4/♭6 | Isus4/♭2→...

殆どがこの繰り返しで構成されています。

I→IVm→II7→V7→...

という進行やそれに近いものが偶に入ってきます。

いずれも骨組みをベースで、上の構成音やテンションをピアノで演奏していてシンプルながらものすごくお洒落なサウンドにまとまっている部分と、ギターやドラムが入ってバンドサウンド仕上がっている部分が対照的で面白いです。本当にこれがアイドルシーンなのか。

ところで上はほぼIとIsus4で構成されていてベースだけ勝手に動いていますね。上の動きに関してはフォースインターバルビルド(4th interval build、4度堆積)と呼ばれているものです。1-4-5のsus4(転回すれば5-1-4で完全4度ずつ積んだもの)も、1-2-5のsus2(転回すれば2-5-1で完全4度ずつ積んだもの)も、ベース音から見た3rdの音が存在しないので、単体で使用すればメジャーともマイナーともつかないサウンドを得られるコードです。

ベースは1→♭3→2→♭2→1→♭3→♭6→♭2→...と動いていて、こちらに関してはパラレルな中でモーダルインターチェンジしていると考えるのが妥当でしょう。♭2を特性音に持つフリジアンの香りが漂ってきます。

さてこんなヤバい進行他にどこで出てくるんだよって感じですが、「秀和を知るには秀和を知ることが有効」とされているように(?)、まふまふ氏、田中秀和氏共作の「人類みなセンパイ!」のCメロがこれです。 

人類みなセンパイ!- アズマリム/作詞:畑亜貴 作編曲:まふまふ/田中秀和

2:40~ Dsus4→Dsus4/F→Dsus4/E→Dsus4/E♭→Dsus4→Dsus4/F→Dsus4/B♭→Dsus4/E♭→...

(I→Isus4/♭3→Isus4/2→Isus4/♭2→I→Isus4/♭3→Isus4/♭6→Isus4/♭2→...)

 

3.Bメロ

♭VII7(9,#11)omit3,5→IV/6→IVmM7/♭6→I/5→#IVm7-5→IVm6→I/3→♭IIIdim7→

IIm7→I/3→IVM7→#IVm7-5→V→V ♭VI | ♭VII V/7

「うおお秀和だ」ポイント、「イントロとメロディーが同じでコードが別物」。この手法に関しては前々から色々なところで言われてはいましたが、今回実際に動画内で言及されています。

イントロではモーダルハーモニーに頼ったサウンド、Bメロでは後半を順次進行に装飾を加えたものにしてサビに向かう形にして、前半はそれを目掛けて半音で下る。最初の♭7をベースに持ち、サブドミナントマイナーの機能を備える♭VII7を使う際、元のキーからできるだけ逸脱しないように音を決めていくと、結果としてコードスケールはメロディックメジャーの第7モードであるリディアンドミナントになる、という流れだと思います、多分。

※GメロディックメジャーはG(1),A(9),B(3),C(11),D(5),E♭(♭13),F(♭7)、FリディアンドミナントはF(1),G(9),A(3),B(#11),C(5),D(13),E♭(♭7)となります。

 

4.サビ

トーナリティにあまり頼らないAメロ、怪しげなコードから始まり半音で「高まり」を持ってこられたBメロを抜けた先にあるサビはめちゃくちゃキャッチーでかわいらしいですね。ABで散々かき回しておいてサビのメロディはほぼダイアトニックなもの、でもコードが装飾されている。これが田中秀和以外でたまるか、というまとまり方です。

I→IVM7→V | #Vdim7→VIm7 | VI7/5→II/#4 | IVm6→I/3→♭IIIdim7→IIm7 | #IVm7-5→IIm7/5 | ♭II7(9,#11)omit3,5→

I→IVM7→VIIm7-5 | III7→VIm7 | VI7/5→#IVm7-5 | VII7(♭13)→♭VII7(9,#11,13) | VI7→IIm7→IIm7/5→

もうね、サビ後半なんて聞いてて絶叫してしまいました。こんなコードにこんなかわいいメロディが載せられていいんだ。この曲が「ゴッドソング」たる所以を感じて到達しました。

という戯言はさておき、前半はお馴染みのdim7を挟みVIm7へ、それを後ろ2拍でドミナントセブンスにし、半音下降へ繋げるようにベースを転回。IIm7まで下ると、またこれをドミナントセブンスにし、テンション9thを乗せてベースを省略。ツーファイブの流れでV7sus4を通り、今度は裏コードから作ったblkコードへ。

後半は同じ感じで始まるものの、VIIm7を目指すマイナー系のツーファイブを挟み、「はじめてのかくめい!」でおなじみの#4→7→♭7→6の動きです。

はじめてのかくめい! - DIALOGUE+/作詞・作曲:田淵智也 編曲:田中秀和

0:15~ C#m7-5→F#7(♭13)→E♭aug/F (/B)→E7 (#IVm7-5→VII#7(♭13)→♭VII7(9,#11)→VI7)

ベースがトライトーンで動いていたり3,5を抜かしてハイブリッドコードになっていたり細かい音は違いますがほぼ同じ動きをしています。

 

本題のコード進行の仕組みですがキーのツーファイブへ向かうセカンダリドミナントのツーファイブを2回やります。できるだけ元のキーに忠実になるように構成音を決めると、#IVm7-5→VII7→IIIm7→VI7を作ることができます。マイナー系のドミナントなので、乗せうるテンションは♭9や♭13です。ところで、IIIの箇所はマイナーでなければならない決められているわけではないので、これをVI7に対するセカンダリドミナントであるIII7へ、更にその裏コードである♭VII7を想定し、解決先のコードの半音上のドミナントセブンスのコードスケールであるリディアンドミナントに沿ったテンションを乗せると、♭VII7(9,#11,13)が完成します。13thはメロのDの音ですが、それ以外の音であるF,A,C,E♭,G,Bはバックできちんと鳴っているのが分かります(コードとしては♭VII7(9,#11)かもしれない)(はじめてのかくめい!もメロを入れれば3,5は抜かなくてもいいです)。

この箇所は「メロディに合う」ことだけを考えれば別に4536でも成立するんですが(C→D→Bm→Eを想像しながらメロを歌ってみてください)、あえてそうせずボイシングの難しいラインで攻める。素晴らしいですね。

 

5.3番Bメロ

8小節目までは全て同じなので省略し、ラスト2小節を異名同音を承知の上で書くと、

Iaug/3 IIaug/♭7 | ♭IIIaug/6 IVaug/♭3→♭Vaug/2 ♭VIaug(/♭6) | VIaug/5 VIIaug/♭2

となっています。これは、augトライアドの全音アップ→半音アップの繰り返し、ベースのトライトーン→半音下降の繰り返しで成り立っていいて、結果として♭IIIaug/6、IVaug/♭3、VIaug/5、VIIaug/♭2がblkコードの形をしていますが、偶然この形をしているというニュアンスの方が強く聞こえます。(アッパーストラクチャとベースが独立して動いている感じ)

augトライアドの最下音はどれに設定しても異名同音で構成音が同じになりますが(つまりIIIaugから始めても#Vaugから始めても同じになります)、上昇の仕方としてはホールハーフディミニッシュスケールに従っていますね。(コードはホールハーフ上では作れません)

ベースはもう秀和さんと言えば裏へ行く、反射で理解できるやつです。まふまふさんとの今共作曲である「女の子になりたい」のラスサビなどに登場します。

3:17〜 ベースがD♭→A♭♭(G)→G♭→D♭♭(C)(5→♭2→1→♭5)と動いているのが分かります。

 

6.ラスサビ

前半は今までと同じですが、後半に少し細工がされています。

I/3→IVM7→VIIm7-5 | III7→VIm7 | VI7/5→#IVm7-5 | VII7(♭13)→♭VII7(9,#11,13) | VI7→IIm7 IIIm7 | IVM7 #IVm7-5→V ♭VI | ♭VII V/7→

ベースが3から始まって雰囲気が少し変わっているのが分かります。VIIm7-5から先は全てベースが1拍ずつ変わっていたり最後の1小節はテンションが乗っていたりするんですが、実際に書いていると大変なことになるのでご自身の耳で動きを楽しんでいただければと思います。

 

7.アウトロ

ギターソロの箇所はサビを圧縮したような感じで動きます。 

I→IVM7→V | #Vdim7→VIm7 | VI7/5→#IVm7-5 | VII7(♭13)→♭VII7(9,#11,13) | VI7→IIm7 IIIm7 | IVM7 #IVm7-5→IIm7/5 | V7→

メロディをギターでなぞる箇所が終わると、

I | Isus4/♭3→Isus4/2 | Isus4/♭2→I | Isus4/♭3→Isus4/♭6 | Isus4/♭2

を2回やって、

I | IVm→IIm | Vを挟んで、

I | Isus4/♭3→Isus4/2 | Isus4/♭2→I | Isus4/♭3→Isus4/♭6 | Isus4/♭2→I | Isus4/♭3→Isus4/2 | Isus4/♭2

で終わります。

 

以上です。